Four you ~2+2=4=2×2~
「私が言えたことじゃないかもしれないけど…こんなに辛い経験、普通の人なら絶対乗り越えられないと思う。でも、詩音はそれを乗り越えて、それどころか、小説にまでしちゃったでしょ? だから、スゴいな~って」
「…どないしたん? 何かエラい感傷的やけど…」

まだ出会って日も浅いのに、何故かいつもと違う。それだけは察していた。

「…実はね…」

映奈が横目で若奈を見る。若奈がうなずく。

「…私達…好きな人がいるんだ…」
「好きな人…?」
「うん。まだ全然その人のことを知らないんだけど、でもこれが相性っていうのかな? この人となら、ずっと一緒にいれそうって思って…。若奈もそうだよね?」
「うん。…笑わないでね?」
「そんな、笑わへんって! 人の恋バナを笑う人がおったら、ウチがその人のこと笑ってまうわ」
「…じゃあ…言うね」

自分に芽生えた恋心でもないのに、やけに心拍数が高かった。

「…私…直都のことが好きみたいなんだ」
「えっ?」
「…アタシは…聖都のことが好きなの」

絵に描いたような、とでも言うべきか、あるいはできすぎた、とでも言うべきか。予想通りにして衝撃的な恋心は、私のどこにも入らなかった。

「…びっくりしたでしょ?」
「…そりゃびっくりするわ…。だってそれ、めっちゃややこしいことになるで?」
「それもそうだね…。でもアタシ達、実はちょっと、よかったって思ってるの」
「何で?」
「だって、好きな人がかぶった方がややこしくない?」
「それもせやけど…」
「…も~、何でちょっと落ち込んだみたいになってるの? 私達、別に振られたってわけじゃないんだよ?」

落ち込んだわけじゃなかった。ただ、本当に単純に、事態が飲み込めなかっただけなのだ。…これも友達経験の差か…なんて思ったら、やっぱり落ち込んでしまいそうでもあったが。
< 44 / 128 >

この作品をシェア

pagetop