押しかけ社員になります!
予選落ち?

「…西野。…西野!…、西野は居るか?」

「あ、はい」

「ちょっと来い」

「…は、い」

はぁぁ。また、なんかやったのか。そんな空気が漂い、部長の声にフロアは一瞬にして凍り付いた。
部長にこうして呼ばれるのはいつもの事。誰もがちらっと目を動かして見るだけで、それ以上、過剰に反応はしない。何やらやらかした。それでまた呼び付けられていると思っているからだ。冷ややかな目だ。

両手を体の前で重ね合わせ、擦り足で素早く部長のデスクに近づいた。
抑え気味でありつつも、私にははっきり聞こえるように部長が話し始めた。

「西野…。どういう事だこれは…。これが俺の頼んだ急ぎの書類の全てか?俺は上にこれを見せて何と言われる?
尋常じゃないアホだと思われるよな?西野、言い訳があるなら聞こうか、どうなんだ。ん?
西野、…西野?…、西野!」

ヒェー。最後の声の大きさにほとんどの社員から向けられた視線を背中に感じた。

「…は、い。…あ、はい!はい?」

やばいです。叱られているというのに…私は、ついうっかり見惚れて…、返事まで上の空になってしまっていた。

「…はぁ、全く…お前という奴は…。ちょっとこっちへ来い」

「は、はい」

ファイルを手に会議室へ向かう部長の後ろを、チョコチョコとついて行った。いや、……フフ、これって…二人きりのお説教ですか?ですよね。


部長はドアの表示を【使用中】に換えるとドアを開けた。

「入れ」

「…はい」

だだっ広い会議室の前の方、先に部長が座った。

「はぁ…座りなさい」

「はい。…では、失礼します」

椅子を引き、長テーブルを挟んで対峙するように座った。かなり、正面の部長とは距離があった。…遠い…。

「はぁ、…西野。何だこれは。説明しろ。いや、説明はいらん。はぁ……毎度毎度。お前は一体、…会社に何をしに来ているんだ…」

「あ、はい!部長に会いに来ています」
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