押しかけ社員になります!

お風呂は温泉らしい。内風呂だから、勿論一緒にだって入れる。
さっきの部長…、いつもと少し違う感じがした。いつもなら、今だって、一緒に入ろうって言いそうなのに。
疲れているのかも知れない。
旅行の為に根を詰めて…、本当は、反対に旅行どころじゃ無いくらいになってるんじゃ…。
私、そんな事にも気付かず、ただ浮かれっぱなしで。


ドタドタドタ…。

「部長!」

「ん゙ぁあ゙?何だあ?どうした?」

…。すみません、毎度毎度。シャンプー中のようですね。

「あの、お背中でも、流しましょうか?」

「……いや…、いい。それより、どうした?もう堪能したのか?随分、早いじゃないか」

「……部長…」

「…ん?何だ?どうした?」

「部、長…」

「ん?…どうした?」

…。

「西野?」

…。

カラカラカラッ。

「どうしたんだ?…西野。
西野…泣いているのか?…どうした。一人にしたから寂しかったのか?…おい、まさか…、怖い目にでも遭ったのか?」

首を振った。

「違います。部長…ごめんなさい。私…」

腰にバスタオルを巻いただけで、慌てて出て来た部長に抱き着いた。

「西野…どうした。何を謝ってるんだ。ん?」

「部長、疲れているのに。私…何も出来なくて。…呑気に寝てばっかりで。自分ばかり、嬉しくて浮かれて、幸せに浸って…気が付かなくて」

はぁ、…そうか。なんだ…、そういう事だったのか。

「西野…。何を勘違いしたのか知らないが、俺は疲れてなんか無いぞ?そうか…。風呂に誘わなかったから、それで心配したのか?」

「はい…」

泣き顔を少し上げた。

「ハハハ。西野。心配するな、本当に勘違いだぞ。逆だ。
いつもいつも俺が鬱陶しいくらい誘うから、今日は、たまたま言わなかっただけだ。俺だって嫌われたくないからな。…馬鹿だな、余計な事に気を遣うな…」

ギュッとされた。

「ぁ、部長。じゃあ、身体は大丈夫?」

「ああ、心配無い。心配するどころか…、元気だぞ?」

思わず目線を下げてしまった。

…。

はい、なるほど。確かに…そのようで。良かった。
……良かった?…。
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