押しかけ社員になります!

何だか…背中に視線を感じるんだけど…。部長…かな。
振り向いて見ても、タイミングの問題なのか、部長の目線は書類を見ているようだし。気のせい?
もしかして、キ〇マークの事、気にしてるのかと思ったけど。見えてるんじゃ無いかって、心配とか。…見えていたとしても、部長の名前が書いてある訳じゃありませんよ?誰がしたかまでは解りませんから。大丈夫ですよ、部長。見えて恥ずかしい思いをするのは私なんですが…。
部長に限って仕事に集中しないなんて、そんな事は無いはず。…馬鹿ってメールしちゃったからかな。でも、部長も馬鹿って返して来たじゃない…。何か気になるなら呼び付けられるだろう。


「西野さん、お昼行きましょうよ」

あ、もうそんな時間なんだ。

「あ、はい。行きましょう」

デスクの引き出しから携帯出来るバッグを取り出した。

「あれ?今日はお弁当じゃないんですか?」

「そうなの。ちょっと寝坊しちゃった。だから時間がなくて…」

本当は早く家を出たからなんだけどね。

「そうなんですか。でも何だかイメージ無いです」

「イメージ?」

「はい。寝坊とか。何でもきっちりしてそうに見えますから。絶対しそうにないと思ってました」

あぁ、人の持つイメージとは、やはり勝手なもの。多分、仕事をしている態度からのものだと思うけど。そんな事からでないと私の判断材料も無いか…。そもそもプライベートな付き合いが無いんだから。

「そんな事、無いわよ?ダラダラしたい時はダラダラしてるし。動かない時は全然動かないし」

「そうなんですね。でもやっぱり想像がつかないです。
あ、はい、プレート、どうぞ」

「有難う」

「何にします?私は五穀米にして…んー……C定食にしようかと」

「私は、そうね…Aにしようかな」

いつだったか、部長が食べていた酢鶏のランチ。今日は酸っぱい物が食べやすいかな。

「すみません。ご飯は少なめでお願いします」

「は~い。Aで、ご飯少なめですね?」

「はい」


少し移動して出された物を受け取った。

「じゃあ、私は、あっちに行くから」

「あ、はい」

一緒に、とは言われない。お弁当でも無いが、離れて座る事に突っ込みは入らない。やっぱり人嫌いで通っているのかしら?これが会社でしか付き合わない現れかもね。

ふぅ。よっこいしょ…。鎮痛剤は極力飲まないようにしているが、流石に二日目は腰が怠~、重~。
…頂きます。お椀を手に取りお味噌汁に口を付けた時だった。

「西野」

っ。…ゔっ。ゴホゴホッ。ゴホン。ゴホゴホ…コホ。……はぁ。
…え゙、この声、部長…?
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