好きって言ったら信じてくれる?




「そもそも何で、あんなこと言ったんですか?」


先輩に家まで送ってもらうことになり、気になっていたことを聞いた。


「ん?」


「“好きって言ったら信じてくれる?”って。」


「あぁ。」


先輩はちょっと笑う。


「あれは、乗りと勢い?」


いたずらな顔で言われて、力が抜ける。


「はぁ。」


「あの頃、ずっと僕のこと避けてたでしょ?だから、放課後廊下を歩く水野を見て思わず声かけたんだけど。あまりに逃げたそうな感じだったからつい勢いで。」


つい勢い、って絶対おかしい。



「よりによって、何でそんなこと。」


不服そうな私に先輩は笑う。


「実際、聞きたかったし。一回結果的に告白したのにスルーされてから、わざとなのか気になってたから。あとは、意外と反応がよかったからちょっと調子に乗ったかも。」



「先輩、今なんて?」



「え、だから調子に乗ったって。ごめん。」



「そうじゃなくって、“一回告白した”って…。」



「気づいてなかったの?体育祭が終わってすぐくらいに“好き”って言ったというか、言おうとしたのに、最後まで言わせてすらくれなかった。水野、すぐ帰っちゃうし、そのあとは何もなかったみたいに振る舞うから。」



「ほんと、ですか?」



そう言われてみれば心当たりがなくはない。


そのころ、私は自分の想いを自覚してそれがバレないように必死だったから。



「ほんとだよ。でも、あの頃もっと粘ればよかった。振り向いてもらえるまで。」



冗談のように先輩は言う。



今更過ぎるけれど、ドキドキしてくる。



そんなに前から両思いだったんだね。



もっと素直になればよかった。




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