振り向いたらあなたが~マクレーン家の結婚~

マリアンヌは出発の一日前、ケヴィンの邸宅の前でウロウロしていた。
今日はサリーはお供していない。引越しの作業で忙しかったし、わざわざお目付け役を連れてくる必要などないと思った。今日はケヴィンにお別れを言いに来たのだ。やっぱり、最後の挨拶ぐらいしないと。
あんなにお世話になったんだし。このまま喧嘩別れしたくなかった。
しかし、一週間前に訪問の許可の申し出を封に出したのに、今日まで返事が返ってこなかった。彼はそんなに怒っているのかしら?彼は根に持つタイプには見えなかったけど。
本当は、彼が拒絶しているなら、来ないでおこうかと思った。
でも散々悩んだ挙句、ケヴィンの家を訪問することに決めた。それでも中々彼の家の真鍮のドアノッカーを叩く決心がつかなく、ずっと外扉の前でウロウロしていた。
「きっと私、通行人から見たら、変な人だと思われているわ。こんなところでずっとこうしていら不審者だと思われて、通報されてしまうかも。あー、早くノッカーを叩かなきゃ。」
そう思うと、マリアンヌはピタリと立ち止まり、意を決して外扉の方へ進んだ。
そして、心臓をドキドキさせながら、ライオンの顔をしたノッカーを2回コンコンと叩いた。マリアンヌは緊張した面もちで待っていると、執事のロバートがドアを開けた。
ロバートがはマリアンヌを見ると、少し驚いた顔をしたが、すぐに礼儀正しい態度に変わった。
「これはこれは、マクレーン様。ようこそおいでくださいました。今日は何の御用件で?」
「コスナー氏に会いに訪問しました。」すると、ロバートは驚いた顔をして、
「マクレーン様。大変申し上げにくいことですが、旦那様は現在留守でございます。」と述べた。
「留守?!まあ、本当に?」それから少しして、「本当に留守ですの?実は私に会いたくなくて、留守にしておくように言いつけてあるとか?」と尋ねた。
ロバートは困った顔をして手を振り、「いえいえ、本当に留守なんですよ。旦那様は数日前から旅に出かけております。当分は帰宅されないようです。」と申し訳なさそうに言った。マリアンヌは本当だろうかと思った。ロバートが嘘を付いている可能性もある。
マリアンヌに会いたくないのかもしれない。
だから旅に出かけたんだわ。手紙を出したのに、その返事も寄こさず、旅に出かけるんだもの。マリアンヌは涙が出そうなのをこらえ、「そうですか。突然の訪問、申し訳ございませんでした。それでは、私はこれで失礼させていただきます。」と言うと、クルリと向きを変え、大通りの方へ足早に去って行った。ロバートが見えない所まで来ると、溢れてきた涙を拭いた。
これは彼の気持ちなんだわ。彼とは終わったのよ。そう思うと、ハンドバッグからハンカチを取り出し、涙を拭いた。
< 24 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop