社内恋愛発令中【完】
「わ、分かりました」



頷くあたしに、蒼井さんは子供っぽい笑顔を浮かべた。



「じゃあ仕事行ってくる」



「はい。…行ってらっしゃい」



そのやりとりが夫婦を思わせ、1人で照れるあたし。



蒼井さんはそんなあたしに微笑み、仕事に向かった。



期待ばかりさせるような蒼井さんの態度に、あたしは心を踊らせながらも寂しい気持ちになる。



誰にでもそうしてる。



蒼井さんは誰にでも優しい人だ。



あたしに限ったことではないと、今度は落ち込む。



我ながら忙しい感情だとは思う。



この気持ちを知ることがなかったら、こんな複雑な感情も知らなかったのに。
< 237 / 355 >

この作品をシェア

pagetop