社内恋愛発令中【完】
「駅つきましたよ、双葉さん」



蒼井さんがあたしの背中を優しく叩いた。



「もう電車来てるみたいですね、乗りましょうか」



蒼井さんのペースは掴みづらい。



「は、はい…」



自分のペースを崩されるよう。



「双葉さんこっち」



暇つぶしがてら、自分の思い通りに遊べるオモチャを見つけたような、いたずらっ子のような目をしているとたまに思う。



もちろん勘違いであってほしいし、思い過ごしであってほしい。



だけど電話のこと、そのあとの言葉を思い出すと、そうはいかない思いが、胸の中にグルグルと渦を巻くのだった。
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