死神喫茶店
異変
前日の夜マッサージをしたおかげで、この前のようなひどい筋肉痛になる事はなかった。


体は疲れていたけれど、解体の仕事をやり切った充実感の方が勝っているようだった。


自分自身が解体の仕事が嫌いではないのだということが、徐々にわかり始めてきている。


決して楽な仕事ではないけれど、『お客様』が安らかな寝顔になって行くのを見ると嬉しいと感じられた。


あたしは昨日作った小銭入れを鞄から取り出した。


ほとんど腐敗が進んでいない『お客様』の皮膚を再利用して作ったものだ。


まだ若い『お客様』だったため、財布の感触もツルリとしている。


肌色の面白味のない財布だったけれど、河田さんが作ってくれた鞄とお揃いで持つと少し可愛らしさが出て来る。


自分が解体した『お客様』を使うというのは不思議な気分だったけれど、こうして見るたびに『お客様』の顔を思いだすのは故人の供養にもなると河田さんは言っていた。


『お客様』の中には身寄りのない人もいるし、それは大切な事なのだそうだ。


「そろそろ学校行かなきゃ」


あたしは時計を確認して立ち上がったのだった。
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