死神喫茶店
知っておいてほしいこと
数時間後。


『ロマン』は閉店時間だった。


閉店の看板を表に出し、入口の鍵を閉めてホッと胸をなで下ろす。


数時間前に河田さんが解体した少年を思い出し、あたしは強く首をふってその光景をかき消した。


「やぁ、お疲れ」


隠し扉の方から河田さんの声が聞こえてきて、あたしは振り向いた。


「お疲れ様です。解体の方も終わりですか?」


「あぁ。今日は少し早めに切り上げたんだ。その分、また明日頑張るけどね」


河田さんはそう言い、疲れたように笑った。


少し早く切り上げたと言う事は、この後なにか予定でも入っているのかもしれない。


邪魔をしてはいけないと思い、あたしは自分のバッグを持って立ち上がった。


「じゃぁ、あたしももう帰りますね」


「モコちゃん、時間があれば少し話をしないか」


邪魔にならないように帰ろうと思ったところを引き止められて、あたしはその場で立ちどまった。


「話……ですか?」


「あぁ。さっきの少年の事を踏まえてね」


河田さんの言葉にあたしは顔をしかめた。


やっと頭から少年の顔をかき消した所だったのに、そのことについて話をされるとは思っていなかった。
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