死神喫茶店
幸せに
ただの風邪で休んでいるのだと思っていただけに、冬を見た時の衝撃は大きかった。


お見舞いから家に帰ってきても冬の苦しそうな表情が脳裏から離れない。


舞美は冬の部屋から出た時、少し泣いているように見えた。


自分の好きな人が高熱を出し続けている。


そう考えただけで、あたしの胸はキュッと締め付けられた。


冬も舞美も、瑠衣も夢羽も、そしてあたしも楓も……みんなが幸せで笑っていられるようにはなれないのだろうか。


自室で机に座り、ぼんやりと考える。


いつ死ぬかもわからない毎日を、苦痛を抱えて生きる事はとても悲しい事だ。


「あたしが瑠衣を取れば、夢羽は傷つく……」


1人でポツリと呟いた。


元々結ばれない運命の2人の邪魔をしている自分の姿が思い浮かぶ。


だけど、瑠衣を好きだという気持ちは捨てられない。


せっかく芽生えた恋心を我慢でねじ伏せたくなんかない。
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