りんごのほっぺ
episode 《2》

第4話 全力、お節介




「さあ、林檎ちゃん。願いを言いたまえ!」



両手を大きく広げながら、顔に喜色を浮かべて、昂然(こうぜん)たる態度で陳(ちん)ずる。───・・・•目の前にいるのは、金色の野獣だった。



私は溜息しか出なかった。



ドウシテ、ココニ、イルノ。



あの後。昼休みの時間中、那智さんと願いを叶えるか叶えないかで相当揉めた。



那智さんはどうしてもランプの魔人になりたかったみたいだけれど、私は叶えたいお願いが1つも無かったのであっさり、きっぱり、ずばっと断った。



それがどうも気に食わなかった那智さんは、放課後、2年B組まで来てしまったのだ。

来た。というよりも、待ち伏せをしていた。という言い方の方が正しいかもしれない。



那智さんは一番乗りで家に帰ろうとした私の帰路をその180㎝も優に超えた大きな身体で通せんぼした。



あの時、どうして那智さんなんかを助けてしまったのだろうか。数時間前の自分が凄く憎い。気まぐれなんて糞食らえだ。



ナイロンのスクールバッグの持ち手をぎゅうっと掴む。那智さんに怯えてる事をできるだけバレないように肩を張った。



「…っさ、さっきも言いましたが、那智さんにお願いする事は1つもありません」



早口ながらも、非力ながらも、精一杯、那智さんに噛み付く。

心の中ではいっちょまえにファイティングポーズ。どっからでもかかってきやがれってんだい!
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