幻が視る固定未来
あきれているのか助歌からは一言もない。

この前『来たくなれば来なければいい』と言って、せっかく来たのにそれに対する感謝の言葉一つもない。
来て欲しくない来ない。どうせオレ一人で出来る訓練だ。そうはっきりとオレが言ったら、きっと助歌は本当に来なくなるだろう。
確かに一人で出来る訓練。むしろ一人の訓練。だから言葉は間違ってはいけない。あくまで助歌はストッパーで制御役だということ。
――それ以前に助歌は母上が決めた位置付け。それを反することは出来ない。

「幻視様、今日はこの辺でやめてください」
「あぁそうする」

これが助歌の位置付け。間違っていない。けど、明らかに助歌の目にはオレに対する期待は曇っている。

そう、初めから期待などしていないという風に。

オレはそれを悲しいとは思わない。むしろ気が楽になったと言ってもいい。それほど助歌の目はオレにさほどの感情を動かさない。
だからそんな眼差しも関係なく普通に話す。
< 114 / 383 >

この作品をシェア

pagetop