幻が視る固定未来
恋色の盲目
――有希乃と恋人になってから一週間。

オレの歯車はいつだって母上の言っていた“真の玄武”となることだった。それが当たり前だし生きる理由。

そしてそれがオレの固定未来。

しかし今はどうだろうか?
どこで歯車は狂ってしまったのだろうか?

その問いをいつでもオレは理解している。だというのにそれが“悪い”と感じたことは一度もなかった。
――いや、オレの歯車自体に変化はない。今だって真の玄武になることを目指している。
でも以前と違うのは歯車を回す軸。
歯車とセットであるはずの軸。つまりは歯車と軸は常に同じ答えを持っている。そうでないと歯車は動かないのだから。

しかし、今のオレは真の玄武を目指しながらも、軸は常に“有希乃”という存在でしかなかった。
歯車と軸のずれ。
それが歯車が狂った理由だろう。けど、真の玄武になりたいけど、有希乃と一緒にいたい。これは一見両立出来るようで出来ないらしい。
軸があまりに大きくて歯車がついてこれないから。
それほどまでにオレは有希乃と一緒にいることを最優先している。
本来なら朝だって有希乃は玄関までだ。以前、オレがそうやって言ったから。けど今は違う。オレの学校まで付き添っている。
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