らしくないけど

「加地?」

いや別に後悔してるわけじゃないんだけど。

むしろこうするべきだと、言うべきだと思っていたのは紛れもない事実で。これが俺的に正解だったはずなんだけど。

「おーい」

何か思ってもない方向に進んだ。

俺の言葉に高野は驚いて、そのあとハッキリ覚えてないけどちゃんと家まで送った。その道中は無言だったけど。

……いやいやいや、無言だったことが一番の問題だろーがバカ。

ちゃんと気持ちを伝えるなら間違いなくあの時間だったし、いきなり「好き」だけ言ってそれ以降会話なしってヤバいし怖いわ。


「ちょっとマジで、加地大丈夫か」

「全然大丈夫」

「大丈夫な感じまるでないけど。つーか俺の声聞こえてる?なあ、加地ー?」


誠二うるせー。マジでうるせー。

俺それどころじゃないから。

何ならこれから高野来るから緊張してんの。今まで通りなんて、そんなわけないし。そうなるならそもそも昨日あんな空気になってねぇし。

いやマジで、どうすっかな。

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