地味な私が恋したヒト
だから桜井くんが帰ってくる前に、サクラさんは帰ってよ……。
そう思う私はなんて心が狭いんだろう。
「用っていうか、見かけたから少し話がしたいなって思ったの。えっと、何ちゃん?」
別れたのに、何を話すんですか?
話すことなんてあるんですか?
そう聞きたいのに、聞けない私は弱虫だ。
「ゆらのです。早坂ゆらの」
サクラさんに自己紹介しちゃってる私も私だけど。
「ゆらのちゃんか。ねぇ、和真と付き合ってるの?」
付き合ってる、よね?
どう答えればいいのかわかんなかったけど、
「……はい」
そう言ってしまった。
だって、サクラさんに桜井くんを取られたくない。
別にサクラさんが今でも桜井くんのことを好きだって決まったわけではない。
だけど……桜井くんを取られてしまいそうで。
なんでかはわかんないけど、そう思うんだ……。
「ふーん、彼女ねぇ?ハッキリ言わせてもらうけど」
サクラさんは私を鋭く睨んで、こう言った。
「アンタ、和真とは釣り合ってないからさっさと別れなさいよ」
さっきまでの優しそうな雰囲気とは180度も違うような、鋭い声で……。
私を睨みつけているサクラさんに圧倒されて、私はなにも言えなかった。
怖いっていうのもあるけど……何より、サクラさんの言ったことが間違ってないから。
だから何も言い返せないよ……。