窓ぎわの晴太くん



「警察呼びますよ~~」


道行くサラリーマンがこの騒動を見つけ加害者に向かってそう叫んだ。


「行くぞ」


新人はまだ殴り足らないような表情を浮かべていたが仕方なく手を止めた。
もう一人の男はすでに姿を消していた。
新人も慌てて裏道に逃げ込んで行く。

晴太はその様子を必死に体を起こしながら見ていた。


「救急車、呼びましょうか?」


サラリーマンの男性は心配して駆け寄りそう言ってくれた。


「あ、いえ・・・大丈夫です・・」


その彼女だろうか・・・
晴太に真っ白なハンカチを差し出した。


「血が出てますけど・・・」



「・・・あ、ありがとうございます・・」


晴太は口元が切れているのが分かった。
いや、口の中も切れている。
血の味でいっぱいだ。


「本当に大丈夫ですか?」


晴太はどうにか道路に座り込んだ。


「はい・・・

大丈夫です・・・


・・あの、今、何時でしょうか?」


駅までどうやって歩いたか覚えていない。
駅についた晴太はトイレで顔を洗った。
うがいをして口の中の血を洗い流した。

汚れた洋服はどうしようもない。


とにかく、里子の家へ行かなければ・・・







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