窓ぎわの晴太くん



502号室と里子からもらったメモには書いてある。
涼がその部屋に行ってみるとたまたまドアが開いていた。
中を覗くときれいに整理整頓されている。
そして空き室と書かれたプレートが置いてあった。

涼は小走りでその部屋から離れた。
もう晴太はここにはいない・・・

涼はマンションから出ると里子が駐輪場の柵に座っているのが見えた。
心配そうな顔で涼の様子をうかがっている。

涼は里子の手を取りすぐにそのマンションから離れた公園まで連れて行った。


「涼さん、ごめんね・・・
晴太さん、いなかったんでしょ?」


里子の目はすでに潤んでいる。


「里子ちゃん、もうやめよう・・・

晴太はまた行方不明になった。
気が向いたら帰ってくるだろうし、気が向かなけりゃずっと帰ってこない。

この間、俺だって久しぶりに会ったんだ。
またいつもの晴太に戻っただけだよ」


里子は一縷の望みをこの住所に残していた。
でも、その望みもあっけなく砕け散った。

晴太へのあり余る思いとどうつき合っていいのか分からない。

晴太さん、どこに行ったの?



涼は里子の泣く姿を見るのは嫌いだった。
晴太のせいでどれほど里子の泣き顔を見てきただろうか。

でも涼は声をかけることもせずにずっと待っていた。
里子が泣き終わって涼の方に顔を向けてくれるまで。

しばらくすると里子の泣き声が止んだ。
鼻をすする音も回数が減っている。
そして、里子は急に立ち上がった。


「忘れてました。
涼さん、今からつけ麺食べに行きましょう」


涼は微笑んだ。
少しずつでいい。
まずは里子が元気になること。

俺の出番はその後さ・・・











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