窓ぎわの晴太くん



里子は嬉しさのあまり部屋を飛び出した。
晴太のいるパーキングに向かって一目散に走る。


「晴太さ~ん」


里子は自販機の緩い明かりに照らし出された晴太の姿を見ると涙がこみ上げた。


「晴太さん、会いたかった・・・」


晴太は里子の摩訶不思議なコメントにいつも笑ってしまう。
西川に向ける笑みとは全く別物のソフトな笑みを浮かべながら里子を見た。


「3時間前まで同じ所にいたんじゃなかったっけ?」



「・・・はい。

でも、晴太さんが帰ってから一秒後には会いたくなって・・・」


晴太は一瞬で癒された。
里子の魅力は晴太に向ける真っ直ぐな言葉と想いだ。
そして、晴太の心はそれを欲しがっていた。


「これを届けないとののちゃんの美味しいお弁当にありつけないと思って」


晴太が最後まで言い終らないうちに、里子は晴太に抱きついた。



「晴太さん、本当に会いたかったんです・・・」


晴太は里子のこの言葉が可笑しくてまた笑ってしまった。
そして、晴太も優しく抱きしめる。


「あっ・・・」



「うん?」


里子は慌ててマンションに向かって走り出した。


「ののちゃん、どうしたの??」



「鍋を・・・

鍋を火にかけたままでした~~~~」


晴太はあっという間に里子を追い抜き先に部屋に入った。
台所は香ばしい焦げた匂いで充満している。

真っ黒になった鍋を見ながら、晴太はすばやく火を止めた。



あ~、やっぱり俺は里子を放っておけない・・・
後、一か月したらここから出て行かなきゃならないのに・・・







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