窓ぎわの晴太くん



「ううん、今日はこれを持って来ただけだから」


晴太はそう言うと、テーブルの上に空のお弁当箱を置いた。
里子が何かを言おうとしたと同時に晴太の携帯が鳴った。
晴太は上着の右ポケットから携帯を取り出し小さな声で返事をすると、焦った様子で里子の部屋から出て行った。


あれ?


さっき、晴太のポケットから出てきた携帯はスマホだった。
以前、里子が晴太の連絡先を聞いた時、ガラケーしか持ってないって言ってなかったけ?


里子は外へ出て晴太を捜した。
マンションの前の道路に出てみたけれど晴太は見当たらない。

どこまで行ったのかな?

性格的にあまり深く考えないタイプの里子だが、晴太の事になるとそういうわけにはいかない。


そういえばまだ晴太さんから携帯に一度もメールがきていない。
スマホを持っているのに?
スマホがあればLINEやSNSだってできるのに?


里子は部屋に戻り、気を取り直して夕飯の支度にかかった。
時間のかからない料理を作りテーブルに二人分のお茶碗を並べ晴太の帰りを待った。


でも、晴太は戻らなかった。
8時が過ぎて9時が過ぎても晴太は帰って来なかった・・・





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