窓ぎわの晴太くん



里子の目から次から次へと涙が溢れだす。


「職場の西川さん達は晴太さんの事は好きになってはダメって言うの。
夏子さんにも同じ事言われた・・・

でも、私は、晴太さんがそんな悪い人だと思わない。
みんな、何も知らないのに・・・」


確かに涼も晴太の事は風の噂で聞いたようなことしか知らない。
でも、その内容は本当にヤバいものだ。
それが真実だったら今すぐに里子を晴太から引き離さなきゃならないほどに。

でも、俺も本当の事は何も知らない。
晴太が家も仕事も友達まで捨てて姿を消してしまった理由なんて・・・


「じゃ、里子ちゃんが聞いてみれば?
晴太に何をやってるのかって。

答えられなかったら、もう晴太はあきらめた方がいいと思うよ」


涼はその言葉を最後に自分の家に帰っていった。


一人になった部屋で里子はもう一度出窓から外を見た。
晴太の存在は里子の心の奥深い場所に居場所を作ってしまっていた。

里子は出窓の前に椅子を持って来た。
晴太が小石を投げなくてもすぐに気づけるように・・・


そして、里子は涼の言うように晴太に聞いてみる事にした。


明日、聞いてみよう。

でも、きっと・・・
晴太さんが何をしていようが私の気持ちは変わらない。
あきらめることなんてできないよ・・・








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