天狗の娘
その時、冷たい突風が紗希の耳元を掠め、隼の足元に白い羽のついた矢が突き刺さった。
彼の草履に泥が撥ねる。
時間差で、ぞわりと紗希の全身が泡立った。
(矢……?)
ゆるゆると流れていた霧すら、ぴたりと止まった。
平和な田舎の泥道で、真白の矢が異様な存在感を放っている。
紗希がゆっくりと顔を上げると、隼は、紗希の背後を凝視して、愕然とした表情を浮かべていた。
紗希もつられて振り返りかけた途端、手首が凄い力で引かれた。