恋愛公私混同症⑷

次は苦手な生物。

理数系は苦手な私。



「ちょっと」



凛々しい声に呼び止められた。


そう、この声の主こそ


“高嶺安奈”。



「……安奈」



「鍵、忘れてる」



「あ。

ありがと」



安奈はすずしい表情で教室に入った。



「安奈、また仕事?」


「まあね、深夜からやってたのに長引いちゃって」



安奈といつも一緒にいる、小春。

あのときすれ違ったときに聞こえたふたりの会話に、私は何も感じてなかったのかな。


今からちょうど1年後、私は今この瞬間に自問自答している。





「……唯一意外なのはこのケータイ小説だよね」



ちひろが私のケータイ小説を取り上げてペラペラとめくる。



「ちょっと、地獄の生物までの貴重な休み時間なんだから。返して」




そう言ってまた取り返す。




「そんなの読んでるから恋できないんだよ」



「ちょっとちひろ黙って」



「黙りませんー」




キーンコーンカーンコーン……




「あーもうほらちひろが邪魔したせいで!!」



「ケータイ小説読む時間があったら生物の教科書でも読んで予習してくださーい」





……むかつく……。




生物が苦手なのは単純に生物が不得意科目だからってわけじゃなくて、

……担当教師も原因のひとつ。



日下部。日下部……まさる?

たしかそんな名前。


30代後半の男教師で安奈を気に入ってる。

そのせいで隣の席の私がよく当てられる。


あー、やだやだ。





私は案の定、20分後日下部の餌食となる。





「最初に波奈がそう言ってきたときはまさかと思ってたけど、今日で納得したよ」



「やっと?

もう本当に席替えしてほしい。

ちひろが安奈の隣になればいいのに」




「ちょっと、あたしを犠牲にするの?」




生物の嫌悪感を引きずったまま2、3、4限を終えた私はいつものように中庭でちひろと昼食。




「ちひろ生物だけは得意じゃん」



「それとこれとは別でしょ、どう考えても」



「……とにかく、今の悩みはそれだけだよ」



「悩みが生物で当てられることだけって……。

波奈、あんたしあわせね」



「全然しあわせ感じてないんだけど」




私はこんな現実じみた話をしたいわけじゃない。

もっと女子高生……JKらしい、華やかで楽しい話がしたいの。


たとえば恋バナとか、恋バナとか、恋バナとか……。
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