狼くんの逃走日記
借金と理由
「もぉ~♪これで借金11万やぞ(笑)ほんまに大丈夫か~?」
「大丈夫じゃないけど、始めたばっかの仕事の給料が金曜にやっと入るからもぉちょっと待ってか!ちゃんと返すから。」
「しゃあないな~。ほな金曜に頼むで!約束やぞ♪」
「わかった。」
悠(ゆう)の問いに口先から出た言葉でなんとか返すチー太。
チー太はすでに悠に借金が11万円あった。金を借りる本当の原因を悠は知らない。しかし悠は何故か普通に貸してくれる。
本当の原因はギャンブルだ。スロット専門店が近所にひしめくこの辺りで育ったチー太は例外なくスロットにはまっていた。
初めて行ったのは、高校を辞めてしまった次の日。バイトの給料日前に財布に残っていた四千円を暇つぶしに使ったところ、なんと八万円も勝ってしまった。それまでスロットなど打ったこともなかったチー太にとって、「ラクをしてお金を手に入れる方法」になってしまい、それからは案の定ハマってしまった。
ギャンブルが好きなことは悠も知っている。しかし悠は疑いもせずにお金を貸してくれるのだった。
そして給料日。仕事は夜勤だったので、木曜の夜から金曜の朝には終わった。
仕事が終わると眠くなっていたが、チー太はまず銀行に行った。
「残高17万円」
チー太は思った。
「これで悠に返すとしても残り6万円。次の給料までほとんど遊べんな。」
チー太はそれでも悠に全額を返したかった。しかし、チー太には大事にしている彼女がいた。
「真美と遊んであげれんくなるし…でも真美に出してもらうわけにはいかんし、ましてや遊ばんわけにはいかんし…あとちょっとでも多かったらなぁ…。」
真美はチー太が悠に借金をしていることを知らない。言えるはずもなかった。
余計なプライドが邪魔をしようとする。
「スロットで少しでも多くしてから返そう」と思いつく他なかった。
こうしてチー太は残高17万円のうち、5万円を卸す。
「少しでも多くするしか方法はない。真美には金が無いとは言えんし、悠に返すにしても全額返す以外の道はないからな。」
こうしてチー太はスロット専門店に入るのだった。
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