ピーク・エンド・ラバーズ
と、芽依に呼ばれて我に返った。
それは岬も同じだったのか、弾かれたように私から手を離す。
「甘いお菓子は全部こっちだよ」
「おけー」
そそくさと廊下を渡って返事をすれば、見覚えのあるブレザーが目に入った。ダークブラウンの短髪が揺れる。
「あ、西本さん」
岬の制服を着ているケースケくんは、元々の穏やかな雰囲気も手伝ってか「近所のお兄ちゃん」感が拭えない。ワイシャツの第一ボタンこそ開いているけれど、岬のように大きく気崩すことなく、本来の正しい着用法を守っていた。
「それ名倉のやつ?」
「うん」
「はは。似合ってんね」
全く嫌味も下心も含まれていない、純粋な口調だった。ここまでさらりと言われてしまえば、こちらとしても特に感情が揺れることはない。
「ケースケくんも似合ってるよ」
「まじ? ありがとー」
軽く笑い飛ばした彼が、次の瞬間、ぎょっとした顔で固まる。
一体どうしたのか、と訝しんだのも束の間。ケースケくんは「じゃあ俺、飲み物出してくるわ」と立ち去ってしまった。
私の顔に何かついていたんだろうか。いや、だったらせめて指摘してくれてもいいような気がする。
「加夏ちゃん」
「うわっ」