ピーク・エンド・ラバーズ


ツッチー、というのは先程の教授の愛称だ。心理学に興味があってこの講義を取ってみたけれど、一ヶ月も経たないうちに少し後悔している。彼女の言う通り、話が長くてなかなかに辛いのだ。


「んー……ていうか、昨日バイトだったから」

「ありゃ。しかも今日一限からじゃなかった?」

「そう。だから眠たくて」


大学生になってから始めた居酒屋のバイトは、時給が良くて助かるのだけれど、帰宅時間は遅くなりがちだった。しかもGWに結構シフトを詰め込んでしまって、その疲れがまだ取れていない。


「加夏も次、空きコマでしょー? 部室行こ」


スマホの内カメラで自身の前髪を整えながら、芽依が誘ってくる。そんなに頻繁に確認しなくたって彼女の髪はいつも綺麗だけれど、逆に言えば常に気を遣っているからいつも綺麗なのかもしれない。


「いいけど、何しに行くの」

「えー、普通に駄弁る。他に誰かいたら楽しいかなーって」


いま早急に片付けなければいけない課題は特にない。
まあどうせ眠いし、眠気覚ましにちょうどいいか、と私は彼女の提案に頷いた。

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