お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「決まったことって、そんな急に…」
「分かってくれよ、ことり」
桐谷課長はずるい。こんな時にそうやって私の名前を呼ぶから、断れないじゃない。
私は頷くしか出来ないことも分かって、思わず下唇を噛んで俯く。
だけど、今この場が桐谷課長とこうして2人きりで話をするのは最後なのかもしれない。
そんな考えが、心の隅の方から急に沸き上がってきて、私は俯いていた顔をあげ、真っ直ぐに彼を見つめる。
「私がリストラされるのは、桐谷課長と関係があったからですか?」
私の質問に桐谷課長は大きく目を見開いて固まって、言葉をなくしているようだった。
「…」
「やっぱり、そうなんですね…」
黙ったままの課長に、私は無理やり口角をあげて笑顔を作る。
「今まで色々とありがとうございました」
それだけを言うのが、私には精いっぱいだった。
「ことり!!!」
私は桐谷課長が呼び止めることにも振り向かず、応接室のドアを勢いよく開くと足早に廊下を歩いた。