その男、猛獣につき
★☆★

「まずはしっかり立位姿勢を取らせて。そうそう…」

 

翌日の金曜日、業務終了後に久しぶりに二人きりで残っていた。

もちろん内容は、有田の森田さんへの治療の練習。

 

階段を下りる練習を、俺が森田さん役をしながら指示を出す。

 

「有田の立ち位置は、症例の斜め前方。膝折れから転倒しやすいからリスク管理徹底しろ」

「はい」

 

有田の眼は真剣そのもので、この数日、森田さんをどうにかよくしてあげたいという気持ちがひしひしと伝わってくる。

 

 

「一息つくか。」

「はい。でも、もう少し、もうちょっとだけ練習付き合ってもらってもいいですか?」

 

「あぁ。」

 

 

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