その男、猛獣につき
★☆★
「よっし!!森田さんの症例レポートかなりまとまっている。これで症例発表用のスライド作ってみて」
実習も残り3週間を切った水曜日、業務終了後にレポートを添削し終わった先生が、朗らかに笑って、私にレポートを渡してくれる。
先生の笑顔、久しぶりに見た気がする。
胸の奥がキュウンとする感覚に襲われながら、達成感が込み上げてくる。
「ありがとうございます。森田さん、明後日の金曜日には退院みたいで…」
レポートを受け取りながら先生に、報告する。
「知ってる。森田さん、有田とかなり練習して、トイレ動作自分で出来るまでになったもんな。家族も『これなら、家でも大丈夫』って喜んでたらしいぞ」
「先生の、ご指導のおかげです」
フフッと、嬉しくて思わず頬がゆるむ。