その男、猛獣につき
「すみません。なんだか先生にわがままばかり言ってしまっていますね」

あまりに優しすぎる先生の言葉に、私は先生の胸の中で呟くように伝える。



「舞花のわがままなら、許す」

先生の言葉を聞きながら、嬉しくなって先生の背中に廻した手に力を込めると、それに応えるように先生も私を強く抱きしめてくれる。


「だけどな、舞花。…この間も言ったけど、先生呼びは禁止!!」


甘い雰囲気で抱きしめあっていた最中に頭上から降ってきた言葉に、豆鉄砲でもくらったようにハッとした私は先生、もとい主税さんを見上げる。


先生は、可笑しそうに口角をあげていた。




「ついでに、二人きりの時は、敬語も禁止!!!」

「えぇぇぇっ」


素っ頓狂な声をあげた私のせいで、さっきまでの甘い雰囲気は一点、主税さんは大きな手を口元に当てて、肩を震わせていた。

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