その男、猛獣につき
「やれやれ……。」
余計なことを考えてしまった自分に、一人苦笑いする。
俺は物音を立てないように細心の注意を払いながら、有田の周りに散乱した教科書類を片付け始めた。
ふと、目に停まった治療手技をまとめた資料。
そこには、この1週間の間に俺が指導した内容が、癖のある丸文字で事細かくまとめられている。
ちゃんと勉強してるじゃん。
乾いたスポンジのように、俺から知識や技術を吸収しようと一生懸命な有田が、愛しくて仕方ない。
俺は思わず、ぽんぽんと優しく有田の頭に触れる。