シークレットな関係
蜂蜜ホリデー

毎日の通勤には電車を使う。

人でぎゅうぎゅうの電車内に辟易しながらも中吊り広告を眺める。

週刊誌の広告には、今をときめくアイドルのスキャンダルとか、殺人事件の真相とか、衝撃的な見出しが躍っている。

月刊誌の広告には宇津木晴香の笑顔があって、表紙を飾ったと分かり、再びもやもやとした気持ちになった。

こうなるのが嫌だから見るのを止めればいいのだけど、注目のタレントや世間の流行りチェックは欠かせないから仕方がない。

見出しを見て気になった雑誌は、買って読んでいるのだ。


駅のコンビニでパンを買うついでに雑誌を買って会社に向かう。

いつも通りエントランスに常駐してる警備員に挨拶をして、他所の会社の知らない人にも挨拶をする。

これはもう職業病というか、子役時代から続いている習慣で、仕事先で会う人には必ずする。

“どこでどうお仕事に繋がるか分からないから”と教えられたのだ。

テレビ局やスタジオに出入りしてない今は、そんなことは関係なく続けている。

だって、笑顔で挨拶をされて嫌な気持ちになる人は少ないから。


エレベーターを降りると、いつもの掃除婦のおばちゃんがいた。

朝一で廊下にモップをかけてくれているのだ。ありがたいと思う。
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