手を伸ばせば、きっと。

「おかーさーん」

「はーい?」


大きめな声でお母さんを呼ぶと、
体ごと私の方に振り返った。


「今日のごはん、何ー?」

「オムライスとミネストローネ。」

「お母さん大好き!」

「華純って本当に単純だね~」


オムライスとミネストローネ。
両方とも私の大好物なんだ。


「私、何すればいい?」

「じゃあ野菜を小さく切ってちょうだい」

「わかったー!」


私は、お母さんと二人暮らし。

小さい頃からこういう風に、
キッチンに二人並んで料理するのが日課だった。

私が5才のときに離婚したから、
お父さんはいない。
顔も、覚えてない。

中学生の頃に、
お父さんはどんな人だったのか
質問してみたことがあるけれど、
お母さんは首を横に振っただけで話さなかった。


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