あの日、君と見た青空を僕は忘れない
最高のプレゼント
【side 幸】

黒田くんの言っていることの意味がわからなかった。


結婚式?

誰と誰が?



「黒田くん…なに言って…」

「俺と岡本で結婚式挙げんの」

サラッとそう言う黒田くん。


「へ?無理だよ。無理無理無理。私病人だよ?結婚式とか無理だって」


余命を宣告された時から、結婚式とかウェディングドレスとか諦めていたから。


「できるよ。したいと思ったらなんでもできる」


「無理だって…」


「いつも強気な岡本幸はどこ行ったんだよ。できないこと可能にするのがお前だろ?」

「でも…」

「それとも、俺が新郎は嫌か?」

少し睨んでくる黒田くん。


「違う!全然違う!」


「じゃあ、決まり。しっかりご飯食べて体力つけとけよ」

「…うん」

「幸…」

黒田くんに名前を呼ばれてびっくりして顔を上げる。


「…俺と結婚してくれますか?」

そう言う黒田くんの顔は少し赤くなっていて。


愛おしいとも思った。



「…はい」


泣きながらそう返事をしたけれど。

黒田くんも泣いていて、すぐ顔をそらした。

「黒田くん、泣いてるの?」


「…汗だから」


下手くそな嘘をつく彼も。

意地悪に笑う彼も。


全部全部愛おしいくて。

声に出ない『ありがとう』が、涙で溢れた。


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