あの日、君と見た青空を僕は忘れない

「黒田くん」

広場から少し離れた自販機で飲み物を買ってると、声をかけられた。

なんだか聞き覚えのある声。



多分、同じクラスの女子だ。
何度か見たことある。
ゆるいパーマがかかったミディアムヘア女子。
男にモテそうな雰囲気の子だ。


「何だ」

と俺。

「…あの」
よく見ると彼女の手は震えていた。


「…この間はごめんなさい!!」

!!!
いきなり頭を下げられびっくりする。


「何のこと?」

「…始業式の時の…階段での悪口…聞こえてましたよね」


始業式…
あ。

あの時の。

確かあのグループにいたような気もする。




「ごめんなさい」

「…いや、いいよ。気にしてないし」

「…さっき、岡本さんが言ってたこと、正論だと思って…知らないのに悪く言うの良くないって…みんなに合わせないと後が怖くて。岡本さんにも…」


「…わかるよ。気にしてないから本当にいいよ。ただ、謝るなら岡本にも直接謝ったほうがいいと思う」

「…え、でも」


「大丈夫だから」


─────

俺は、岡本を呼び出す。



「ん?」

「…話、あるんだって」
俺は謝ってきた彼女を見ながらそういう。

「相沢さん、どうしたの?」
と岡本。

相沢っていうのか…。
覚えるの早いな、岡本。


「あ、あの。この間、グループの子たちと、岡本さんの悪口言っちゃいました。ごめんなさい!!」

相沢はそう頭を下げた。


なかなか難しいことだ。



グループと違うことするなんて。


「…相沢さん、顔上げて?ありがとう。本当のこと言ってくれて。私、すっごく嬉しいよ。わかってるもん。自分がうるさいことくらい」


「岡本さん…」


「…みんなの気持ち分かるから。大丈夫だよ。ただ、ありがとう、本当に」


悪口を言われてたなんて聞かされていい気持ちはしないだろう。


でも、岡本はわかってたらしい。

あの空気もみんなの思ってることも。


「あ!そうだ!!お弁当!一緒に食べない?」

と岡本。

「バカッ、グループから抜けて食べるとか無理に決まってるだろ」
岡本の頭を軽く叩いてそういう。

「…そっか」


「ううん!一緒に食べても、いいかな?」


え。
いいのか。


そして、3人で弁当を食べることになった。




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