ボディーガードにモノ申す!
5、 干物女の休日の過ごし方。


真山武が私のボディーガードになってから、約1週間が経過した。


私は極力ヤツとの会話を避け、必要最低限のことだけを口にし、なるべく関わらないように努めた。
それは自分自身を苛立たせためというのもあったし、あの嫌味ったらしい顔で憎まれ口を叩かれるのが耐えられないからというのもあった。


とにもかくにも、私はあの男が苦手だった。


週に2回の休みの日は、もちろん真山と顔を合わせることもないので非常に気が楽だった。
彼はどうやら夜の私の警護以外に、昼間はどこかの会社の警備員として働いているらしい。
一度だけ早番の時に約束の時間を過ぎてから現れたことがあったので、その時に事情を聞いたのだけれど。
私はその時、「掛け持ちご苦労さまです」と感情の無い声でヤツを労ってやった。


橋浦さんに急きょシフト変更を言われた日に仕事に出たため、別な日に代替の休みをもらえた。
タイミングよく親友の清恵も休みだったので、この間キャンセルしたランチを敢行することになったのだった。


「うん、美味しい!ここのパスタ、モチモチしててほんとハマるわ〜」


ジェノバソースのパスタを口の中いっぱいに味わいながら、モゴモゴとしゃべる清恵。
私が「そうだね」と返そうとしたら、それを遮るように彼女の隣から低い声。


「清恵ちゃん。口の端っこにソースついちゃってるよ」

「え、うそ!やだ〜取って」


甘ったるい声で微笑む清恵の口元に指を運び、指先でソースをするりとぬぐい取るとそのまま指を舌でペロッと舐める男。
極上のイケメンがやったらドキッとしそうな仕草だけど、私はちっとも胸なんか高鳴らない。
高鳴っているのは清恵だけらしい。


「もうっ、富夫くん!椿が見てるでしょ〜?」


そう、清恵の隣に居座る男は池山富夫。
交際期間2年を迎えた彼女の恋人である。


私は苦笑いを浮かべて、いつまでもラブラブな2人に視線を送ることしか出来ない。
本来ならば清恵と私だけのランチの約束だったはずなのに。富夫くんも仕事が休みになったらしく、ついてきたのだと言う。


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