二人の穏やかな日常

仲直りの


前原さんの家にお邪魔してお父さんに認めてもらえた日から、珍しく一週間ほど仕事が続いて、今日は久しぶりの休み。

あの日は緊張していたのと前原さんが全部飲んでしまったのとで、俺がなかなか飲めなかった。

休みだし贅沢に昼から飲み始めようということで、一人で飲み続けた。


飲み続けて一時間ほど経った頃だろうか、インターフォンが鳴ってそこには前原さんが立っていた。

戸を開けて前原さんを見下ろすと、それはそれはまるで絶望の淵に立ったような暗い顔で立っている。何事だ。


「どうしたんですか?」
「私……あれ、斎藤さん、飲んでます?」
「あ、はい」
「ふーん、ちょっとこれ……見てください」


前原さんがサンダルを脱いで家に上がって、いつもの場所に腰を下ろすと、一枚の紙を渡された。

模試の結果。
偏差値は全てが50を切っていて、中でもリスニングの偏差値を見たときは目を疑った。


「これマーク模試ですよね?リスニング0点って逆に難しくないですか?すごいですね0点取ると偏差値こんなんになるんですね!ウケる全部①選んだ方がよっぽど点とれますって」


言ってしまったあとで、はっとした。

どうして酔いがまわると思ってることがこうぼろぼろ出てくるんだろう。

でも仕方ないとも思う。
偏差値35切ってるのなんかなかなか見ることないし。


前原さんは物凄い形相で俺を睨み付けている。
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