二人の穏やかな日常

文化祭①


ああ、高校生ってそういえばこんなに輝いた生き物だったな。

すごく身近に現役女子高生が居たけど前原さんは例外だから……。


「うぉぉ現役JKで溢れている!」
「現役じぇーけー!」


圧倒されている俺の隣で、兄ちゃんが目を輝かせて変態のような台詞を吐き、意味が分かっているのかいないのか、智輝もそれを真似した。


「年上が良いんじゃなかったの兄ちゃん」
「守備範囲は中学生から五十才、いや六十までだ」
「一応枠はあるんだな」


今日は前原さんの高校の文化祭。

数日前、「もし斎藤さんお休みなら是非来てください。お兄さんと智輝くんも良かったら」と、招待状を貰った。

日曜日なので会社員の兄ちゃんと智輝は休み。
俺もきっちり休みだった。


こんなに若くエネルギーに溢れた集団に囲まれるのは数年振りなのでなんとなく怖じ気付いていた俺の手を、まだまだ元気な二人が引いてくれた。


「百合ちゃんのクラス一番初めだっけ。とりあえず最初に講堂で良いか。智輝、始まる前にトイレ行っとけ」
「はーい」


兄ちゃんが、正門前で配られたプログラムの紙を見ながら仕切ってくれる。


兄ちゃんはあれ以来何回か前原さんと会ううちに、〝前原さん〟から〝百合ちゃん〟へと呼び方が変わり、話し方も敬語からタメ口へと変わった。

勿論一方的にだけど、なんとなく嫌だ。


前原さんのクラスは講堂演技をすると聞いた。

シンデレラをするという。
主役のシンデレラ役は以前話していたあのチャラ男のホーリーとやららしい。

シンデレラ役をチャラ男がやるとはなかなか良いキャスティングだと思う。面白そうだ。
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