二人の穏やかな日常
一番近い自販機は家のすぐ下にある。
小銭だけ持って自販機にたどり着いて、暫く固まった。
「……なんでバナナ茶ないの!?」
バナナ茶。
私がいつもこの自販機で買うジュース。
いやお茶だろうか。いや多分あれはジュース。
とにかくこの自販機に備わっているドリンクの中で一番のお気に入りだった。のに。
なくなってる……。
「あ、本当だ。ざまあ」
「なんで……」
「人気出なかったんだろ。あんなくそ不味いもん好き好んで買ってたのお前くらいだ」
隆二はにやりと嬉しそうに笑ってから私の手の平から百二十円奪って、さっさと炭酸入りグレープジュースを買った。
「うああ……」
「早くしろ百合」
「ちょっと待ってよバナナ茶無いんだもん。くっそ、どれにすれば……」
隆二に急かされながら多分そこで三分は迷ってたと思う。
後ろからあの穏やかな声が聞こえた。
「どうしたんですか?」
「あ」
斉藤さんだ。ゴミ出しの日以来。