二人の穏やかな日常

私がラインの返事をしたわけではないけれど、あまりに嬉しそうで、しかもそれを真っ直ぐ私に伝えてくれる富井くんを見ていると、すごく申し訳ない。

申し訳ないからこそ、余計に本当のことを言えなくなる。

本当に、どうしてこの人は私のことが好きなんだろう。



「じゃあね!」


今日も嵐のようなマシンガントークのあと、ひらりと手を振って教室を出て行った。

私はぼんやりと富井くんが出て行った扉の方向を見つめていた。


「あんだけ喜んでるんだ。取り敢えず行ってこいよ」
「これで、あの返事がまえほっぴー本人のものじゃないって知ったら、富井くんショックどころじゃないよ」


富井くんのことだから、きっと事実を知っても私を責めてきたりしないんだろう。
ただ笑って「なんだ、残念」とか言うと思う。

でも絶対、すごく傷付ける。


「なあまえほっぴー。俺が思うに、あいつと付き合うのも悪くないんじゃねぇの」


ホーリーの言葉に俯いていた顔を上げる。
ホーリーはわりと真剣な顔をしていて、ちょっと気持ち悪い。


「……この間と言ってることちがくない。イケメンは全員敵でしょ?」
「俺にとってはな。でも別にお前は関係ないし、それにあいつ、なんかちょっと痛いとこあるけど良いやつっぽいし」


良い、やつ……。
そうなんだよね、かなり変わったところはあるけど、実際すごく優しくて良い人には変わりないんだよね。

それはここ数日富井くんの側にいた私は、嫌でも知っていることだった。
< 30 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop