Office Love
section 1
「あの3人が並ぶと壮観よねぇ。」

女子社員からそんな黄色い声が聞こえるのは、この会社の営業部の敏腕社員。
並べば壮観なのは3人の容姿が端麗だからだ。
けど、仕事っぷりもそれぞれに素晴らしい。
彼らの『特別』を狙っている女子社員は少なくない。


「七瀬、悪いけど、これ企画部に持ってってくれへん?第一企画課の表原に渡しとって。」
「畏まりました。」


ゆる~い関西弁で話しかけてくるのは第一営業課の平川真子(ひらかわしんじ)。
一課ではこの人の右に出る人はいない。
彼の下で働き出して1年。
雑用から資料作成、彼のアシスタントとして働いている。


彼の『特別』を特に狙ってる訳ではない。
私如きが彼の『特別』になれるだなんて考えてもみないから。
いつもいつも彼の周りには華やぐ女が群がっている。
それを嫌がる素振りもせず、上手くかわすところなんか、手慣れてるなと感心する。


企画部へ行こうと席を立てば、もう一人の容姿端麗が歩いて来た。


「七瀬、どこに行く?」
「企画部の表原さんの所に。」

ちょうど良かったと、彼も私に表原さん宛ての書類を手渡す。
私は御用聞きか?と、溜息を吐きたくなる。

書類を受け取れば、彼がそっと耳元に近づき、

「この礼は今度、必ず。俺のために空けとけ。」

と、強引に約束を取り付ける。
この男、佐々木修兵(ささきしゅうへい)。第三営業課の女誑し。

誰彼構わず、食事に誘うのはこの男の手口。
もちろん、そんなのには引っ掛かる気もないので、

「結構です。これも私の仕事ですし、ついで、ですので。」

と、ついで、を強調して言葉を返す。
佐々木さんと話してると、後ろから平川さんが追い掛けて来た。

振り返り、「何か忘れものでも?」と聞けば、

「ええねん、何もない。早よ行き。」

と、背中を押された。
一体何なんだ?と、思いながらも2つの書類を手に企画部を目指す。



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