その時にはもう遅かった
「…えっと…。」

何を返せばいいのか分からずにとりあえずのつなぎの言葉が私の口からこぼれる。

こういうのって大体はスルーするものじゃないの?

「でもまた誘うんで。」

少しも表情筋を動かさずに続いていく言葉は少なからず私を混乱させた。

私、前に断ったよね。

「な…なんで?」

「なんでって。」

意味が分からず口は開いたまま瞬きを重ねる私に夏目くんは首を傾げた。

いや、それをやりたいのは私の方だし。

夏目くんは中身を全て飲み干してもう一度私と向き合い短く息を吸った。

「神崎さんが好きだからですよ。」

「は?」

間髪入れずに返した疑問符は虚しく宙に消えていく。

最後に発したままの口の形から変わらない状態でじわじわと夏目くんの言葉が沁み込んできた。

それは瞬きの回数に比例して心拍数を上げていく。

嘘でしょ。

そう心の中で呟いたが最後、見事私の体温は急上昇して真っ赤に染まってしまった。

「分かりやすい反応で助かります。」

慌てて両手で顔を隠そうとしてもきっと指先まで真っ赤に違いない。

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