あの日、あの時、あの場所で。
ー正門を出た時ー

「あ、あの!西川先輩!」

「ん?私…?」

「はい!少しお時間を頂いてもよろしいですか?」

「蓮也…どうする?」

「だーめ。俺の彼女だから」

「え…?」

「やっぱりそうでしたか…」

「そう。だから悪いけど諦めてくれる?」

「そうですね…なんて言うわけないでしょう?」

「えぇー…後輩くん…諦めてよ…」

「嫌です。明日も覚悟してくださいね。
西川先輩♪」

そうして、謎の後輩くんが走り去っていった後、杏奈は膝からガクッと崩れ落ちそうになるのを蓮也に止められた。

「杏奈。」

その声に安心して、杏奈はポロポロと大粒の涙を流し始めた。

「俺が…怖い?」

ふるふると大きく首をふる杏奈。

「そっか…俺のこと嫌い?」

「ううん!嫌いじゃないよ…」

「そっか。俺のこと好き?友達として」

「うん…!」

「俺も好きだよ。友達として。」

その瞬間、杏奈は世界に色がなくなったかのように見えた。

「え…?」

「ごめんな。今嘘言ったわ…」

「え?」

「女の子とし大好きだよ。」

「ヒックヒック…うん…っ」

「杏奈は?」

「わた…し…は…」

その後の言葉が言えなかったとは、嗚咽が混じって言葉が続かなかったから。
だよね?
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