不器用な愛を刻む
その一方、部屋を出て行った善は
役所の出口がすぐそこという所で
後ろから来た喜一と合流した。
「…悪かった、依頼の内容が実はそんなものなんて俺も知らされてなかったんだ。」
「ククッ…知ってたらお前、あの紙破り捨ててただろうなァ。」
別にお前のこと責めたりなんざしねェよ。
と喉で笑いながら
喜一に告げる善。
2人は歩きながら役所の外に出て
町中に出た。
「上司の失敗は俺の失敗さ。
お詫びに酒でも奢ろう。」
「フッ…、さすが出世する男は違ェな。」
その言葉に甘えるぜ?
と、善は少し上機嫌に笑みを浮かべ
喜一にそう返す。
2人は歩き進めながら
酒屋を見つけて、そこに足を踏み入れる。
文化の移り変わりと言えど
和服の人もたくさんいる中で
善の姿は普通の町人には見えないほど
高貴で優雅に見えるため
人の目が一気に集まった。
上等な着物や雰囲気に加え
そこらでは見れない---金色の髪。
そして何と言っても…
「はは、すごいね善。
女性からの視線が熱いよ?」
「…知らねぇなァ。」
彼のその---美貌に
目が離せない女性が
ジッと彼を見つめるのだ。
それを笑顔で告げる喜一に
いつもの笑みを浮かべながらも
興味なさそうに顔を背ける善。
そして2人は注文を頼み始めた。