不器用な愛を刻む




その一方、部屋を出て行った善は

役所の出口がすぐそこという所で
後ろから来た喜一と合流した。







「…悪かった、依頼の内容が実はそんなものなんて俺も知らされてなかったんだ。」

「ククッ…知ってたらお前、あの紙破り捨ててただろうなァ。」







別にお前のこと責めたりなんざしねェよ。




と喉で笑いながら
喜一に告げる善。



2人は歩きながら役所の外に出て

町中に出た。








「上司の失敗は俺の失敗さ。
お詫びに酒でも奢ろう。」

「フッ…、さすが出世する男は違ェな。」






その言葉に甘えるぜ?



と、善は少し上機嫌に笑みを浮かべ
喜一にそう返す。






2人は歩き進めながら
酒屋を見つけて、そこに足を踏み入れる。





文化の移り変わりと言えど
和服の人もたくさんいる中で

善の姿は普通の町人には見えないほど
高貴で優雅に見えるため

人の目が一気に集まった。





上等な着物や雰囲気に加え
そこらでは見れない---金色の髪。


そして何と言っても…









「はは、すごいね善。
女性からの視線が熱いよ?」

「…知らねぇなァ。」








彼のその---美貌に
目が離せない女性が

ジッと彼を見つめるのだ。





それを笑顔で告げる喜一に

いつもの笑みを浮かべながらも
興味なさそうに顔を背ける善。





そして2人は注文を頼み始めた。







< 42 / 180 >

この作品をシェア

pagetop