天使の梯子

ああ、四年経っても私はなにも変わっていない。


あの時、強くなるって決めたのに。私の時間は、あのときから動いていない。


「楓……」


そんな愛しそうに、私の名前を呼ばないで。


私にもうその資格はないの。だって私は、あなたを裏切ったのだから。


私はあなたを、信じられなかったのだから。


ポタリと私の身体に水滴が落ちる。


ぼうっとした意識の中で諏佐さんを見上げるけど、それが汗なのか、涙なのかもわからなかった。


「楓、愛してる」


そんな言葉もらう資格、私にはもうない。


ああ、目が覚めたらこれは全部夢だったって、そうなったらどんなにいいだろう。


そうしたら愛する人に愛されるいい夢だったって、笑えるのに……。


< 38 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop