キミは僕に好きとは言わない

「僕の前で堂々となずなちゃんを口説かないでください」



「ふんふんふ〜ん」


鼻歌交じりにステップを踏んでいた。


今日は待ちに待った約束の土曜日。萩原先輩の家に遊びに行く日だ。


見慣れたはずの街並みがキラキラ輝いて見えるのも、先輩の影響。

大好きな萩原先輩に会えるんだもん。浮れるのは当然だよね。


「はぁ……早く先輩に会いたい」


しかし、浮かれ気分で歩いているのはいいが、実は1つだけ大きな問題が発生していたりもする。

それは………………。


「あんまり浮かれてると転びますよ?」


うっ。

背後から聞こえてくる嫌な声。

くるりと振り返ると、声の主にわざとらしい笑顔を向けられた。


「転ばないし!だいたいなんで桃矢がいるのよ!」

「あぁ、僕のことは気にしないでください」

「気になるから言ってるんだけど」


……そう。

大きな問題とは、わたしの幼なじみである、桃矢が隣を歩いていることだ。


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