キミは僕に好きとは言わない

「だから、手を出さないでくれませんか?」



結局、モヤモヤとした気持ちが抜けないまま待ち合わせの時間になっていた。


桃矢を連れて待ち合わせ場所に向かうと、先輩は既に到着していて「なずなちゃーん、桃矢くーん!」と、手を振って迎えてくれた。


「すみません、お待たせしました! 」

「ううん、俺も今来たところだよ」


きゅん。

顔を合わせてわずか数秒。先輩はすぐにわたしの胸キュンポイントをついてくる。


マンガでもよく見たデートの定番台詞。

先輩はそんな計算してないだろうけど、憧れていた台詞だけに言われると素直に嬉しい。


「おっ、今日はナズナのネックレスもしてるんだね。可愛いよ」

「あ、ありがとうございます……」


せっかく頑張ってオシャレをしてきたのに、先輩はわたしよりも花に敏感らしい。


この日のために選んだ洋服、メイク、ヘアアレンジ。

ネックレスよりわたし自身を褒めて欲しかったと思うのは、わがままかな。


今日のわたしの全部は先輩のためなんだよって、気付いて欲しかったのに。


残念……………。

桃矢から貰ったネックレスをつけてるだなんて、口が裂けても言えないや。


< 90 / 289 >

この作品をシェア

pagetop