続★俺だけの家政婦さん

『恋待ち草』

須藤先生から受け取った原稿を胸に抱え、しばらく玄関で突っ立っていたが

こんなことしてる場合じゃない。

野末くんが帰ってくる前に読んでしまわないと･･･と思った私は

自室に戻るとベッドに腰掛け、茶封筒の中の原稿を取り出した。

きっとこの原稿は私が世界で一番最初に読むのだろう。

ちょっと前なら興奮してフガフガしながら最初に読める喜びを

噛みしめつつかなり興奮しながら読んだと思う。

だけど今の私はとてもじゃないがそんな気持ちで読めない。

だって、今から読む物語のモデルが私と野末くんなんだよ。

私の黒歴史を須藤先生に話さなければここまで緊張なんかしなかった。

もしあれに似たような事がここに書かれていたら･･･

そのことばかりが頭に浮かび緊張を通り越して恐怖に近い心境だ。



タイトルは意外にも渋めの「恋待ち草」と言う物だった。

そして1ページ目を読み始める。

だがすぐに噴きそうになった。

「何？この名前！」

主人公の名前は武田香織（たけだかおり）と言う女の子と

野田圭介(のだけいすけ)という男の子。

私はすぐにピンときた。この名前、私と野島景をもじってつけた名前だ。

「名前にひねりがないんだけど～」

思わず思ったことが口から出てしまうほど呆れてしまったと同時に

不安がよぎる。

名前でこれだって事はまさかの事実を元にしたフィクションってやつか？