続★俺だけの家政婦さん
4

契約終了の前日

「とうとう…この日がきたか」

長かった住み込み家政婦生活も残すところ明日の午前中で

終わりをむかえる。

最初はどうなることかと思ったけど

慣れというのは怖いもので、最初は嫌だ嫌だと思っていたのに

実際やってみると自分が思ったほど嫌ではなかった。

特に、8年前にひどい振られ方をし、いまだにその傷が癒せず

私を振った野末君のことが憎かったはずなのに

一緒に暮らしているうちに憎らしいという気持ちも自然と

薄れていた。

しかも、ふいに野末君をみてドキっとしてしまったことも何度かあった。

そのたびに私は『今のドキは違う。野末君にときめくなんてありえない』

と言い聞かせていた。



野末君の原稿は一昨日書き終えた。

昨日、児島さんがやってきて

「今までの作品の中で一番よかったです」と興奮していた。

そしてなぜか私の手をぎゅっと握ると

「栞里さんがいたからこそ書けた作品なんですよ」と

目をキラキラさせていたが、正直私が何をしたというのだろう。

お金をもらって家事全般を住み込みでやっているだけじゃない。

仕事が終われば一人で過ごすから野末君と話すことなんて

ご飯を食べているとき。

児島さんが喜ぶようなことなど何一つないと思う。

それでも、家政婦がいることで執筆に集中できたというのなら

ここに来た甲斐もあるのだろう。
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