あなたの愛に深く溺れてしまいたい
その時、柴咲課長の携帯が鳴った。


「はい、柴咲。……あぁ、いや。今、ミーティングルームにいる。…いや、俺がそっちに行く」


どうやら社員が柴咲課長を探すのに電話をかけてきたのだろう。


柴咲課長は電話を切ると、私からスッと離れ、メガネをクイッと上げた。


「今日の夜、飲みに行くか」

「えっ…」

「9時までには終わらせる。ここから近いBlueってBAR知ってるか」

「……知ってますけど」

「じゃ、9時にBlueで。嫌だったら来なくてもいい」


それだけ言うと、柴咲課長はミーティングルームを出て行ってしまった。


「課長って、みんなズルイのかな……」


松谷課長もズルイ人だった。奥さんがいるのに、私を誘うのが上手だった。


柴咲課長もそうだ。あんな情熱的なキスをしといて、嫌だったら来なくてもいい…なんて。


本当にズルイ。さて、私はどうする──


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